諏訪清陵高等学校校歌(第一) 伊藤 長七 作詞
一 東に高き八ヶ岳 西にはひたす諏訪の湖(うみ)
大和島根の脊梁と 信濃にしるき秀麗の
湖山の中に聳え立つ 吾が学び舎(や)を仰がずや
二 春城上の花霞 白帆のかげもほのかなる
衣ヶ崎の朝ぼらけ 芙蓉の峰を望みては
昔忍ぶの石垣に みやびの胸の通ふかな
三 夏は湖水の夕波に 岸の青葉をうつしつつ
オール執る手も勇ましく 漕ぐや天龍富士守屋
げに海国の日の本の 男(お)の子の意気ぞたのもしき
四 唐沢山に秋長(た)けて 御空(みそら)も澄める運動場(ひろにわ)に
思へば遠し千早振る 建(たけ)御名方(みなかた)の英霊や
絶えて久しき大神(おおがみ)の 武建の腕を鍛へばや
五 冬綿(めん)嶺(れい)の山の雲 吹雪ぞ荒るる北風に
堅氷鎖(とざ)す方(ほう)十里 もしそれ月の色冴えて
学窓書(ふみ)に親しまば 吾が雄心(おごころ)の湧かずやは
六 見よ千頃(けい)の田園や 煤煙(ばいえん)つづく製糸場(せいしじょう)
世界の富を集めては 国の基(もとい)を興さんも
希望(のぞみ)にみてる青春の 吾等を措きて誰かある
七 思へや汽笛中央の 鉄路に沿うて響きつつ
心は駆ける五大洲 理想の岸は遠くとも
日に新たなる進運の 学びの道に後れめや
八 それサクセンの林中に 独逸(ドイツ)の国の力あり
清き流れはアルプスの 深き谷より出づとかや
ああ信山の健児らの やがて咲くべき春や何時
諏訪清陵高等学校校歌(第二) 中島 喜久平 作詞
ああ博浪(ばくろう)の槌(つい)とりて 打破せむ腐(ふ)鼠(そ)の奴ばらが
弥生(やよい)半ばのこの夢を
一 おしてる難波の群(むら)葦(あし)の 世は昏々(こんこん)と華(か)に眠り
赳々(きゅうきゅう)武夫のおもかげは 氷に鏤(え)りし玉楼の
消えて跡なしあなあはれ
二 空しかるべき男(お)の子やも いで独歩せむ天地(あめつち)に
鷲がかかなく八(はち)岳(がく)の 山高(やま)の骨ゆく青雲(あおぐも)の
たかき志(こころ)を身に負ひて
三 開かばならむ梓弓 春の古城のはつ花と
躍らばならむ天龍の 風雲紫閃(ふううんしせん)の間より
空(くう)を凌がむ勢(いきおい)と
四 怪鳥(かいちょう)かけらふわたつみの 中に碁(き)布(ふ)せる乱島や
雲たち迷ふ国原(くなばら)の 青人(あおひと)草(ぐさ)はたによりて
平和の二字を得むとする
五 春秋多き青年が わざにたぐへば筑波(つくば)山
は山繁山しげからじ 浜の真砂(まさご)もいかでかは
我等たたずば世をいかん
六 いざや友垣とぎおろす 破邪(はじゃ)の利剣にうつる身の
よしやつるとも大君に 南洋東亜の人の子に
尽くさでやまむ心かと
七 朝嵐(ちょうらん)暮煙名細(なぐわ)しき 湖山の中にゐごもれる
覇気喚(よ)びおこし武に文に 此の世をさます床(とこ)虫(むし)と
ならでやむべきこの身かは
八 ああ麗(れい)水(すい)に金砂あり 崑(こん)岡(こう)玉を出(いだ)すとか
乱麻(らんま)をたつの英傑は 其の地人士の精粋(せいすい)の
凝(こ)りては出づと知るや君
九 再び槌(つち)をふりあげて いくその魔をば砕けかし
夫(そ)れ質実を経(たて)にして やよ勤倹を緯(よこ)にして
織りも出でなむ校風を
十 山をも抜かむ意気をもて 海をも呑まむ慨をもて
鉄槌(てっつい)三度(みたび)かざしては 吾(あ)等(ら)が手ぶりに靡(なび)けとや
雄叫(おたけ)べ友よ茜(あかね)さす
朱(しゅ)曦(ぎ)八(はっ)荒(こう)を照らすとき 芙蓉(ふよう)峰頭一点の
理想の花の咲かむまで